2026年10月23日

健康診断や人間ドックで、AST(GOT)・ALT(GPT)・γ-GTPの数値が高いと指摘されることがあります。
「お酒をあまり飲まないのに、なぜ数値が高いの?」「症状がなくても受診したほうがよい?」「どんな検査を受けるの?」と不安に感じる方もいるでしょう。
肝機能の数値が高くなる原因は一つではありません。まずは検査結果を確認し、原因を調べることが大切です。
肝臓は、異常があっても症状が出にくい臓器です。体調に変化がなくても、病気が隠れていることがあります。
肝機能異常を指摘された場合は、健診結果、これまでの病気、服用中の薬、飲酒などの生活習慣を確認します。そのうえで、必要に応じて血液検査や腹部エコー検査を行います。
この記事では、肝機能異常の主な原因と、腹部エコー検査でわかることをわかりやすく解説します。
1.「肝機能異常」とは?
健康診断では、主に次の血液検査から肝臓や胆道の状態を調べます。
・AST 肝臓や筋肉などの細胞の障害
・ALT 主に肝細胞の障害
・γ-GTP 肝胆道系の異常や飲酒などの影響
・ALP 胆汁の流れの異常など
・ビリルビン 黄疸や肝臓・胆道の異常など
これらの数値が基準値を超えている場合、肝臓や胆道に何らかの異常がある可能性があります。
ただし、数値が高いからといって、必ずしも重い病気があるとは限りません。
反対に、軽い異常でも、数値の変化やほかの検査結果によっては詳しい検査が必要です。
一つの数値だけで判断せず、検査結果を総合的に確認することが大切です。
2.肝機能異常の主な原因
① 脂肪肝
脂肪肝は、肝臓に脂肪がたまりすぎた状態です。
肥満、糖尿病、脂質異常症、飲酒などが関係します。
お酒をほとんど飲まない方でも、脂肪肝になることがあります。
肥満や糖尿病など、代謝の異常に関連する脂肪性肝疾患は、現在「MASLD(代謝機能障害関連脂肪性肝疾患)」と呼ばれています。
多くの場合は症状がありません。ただし、一部では肝臓の炎症や、肝臓が硬くなる「線維化」が進むことがあります。
② アルコールによる肝障害
長期間にわたって多量の飲酒を続けると、肝臓に負担がかかり、肝機能異常につながります。
γ-GTPが高くなることがありますが、飲酒量だけでなく、ほかの検査結果もあわせて判断します。
③ ウイルス性肝炎
B型肝炎ウイルスやC型肝炎ウイルスに感染すると、肝臓の障害が長く続くことがあります。
必要に応じて、血液検査で肝炎ウイルスへの感染の有無を調べます。
④ その他の肝臓・胆道の病気
薬の影響による肝障害、自己免疫性肝炎、原発性胆汁性胆管炎、胆石、胆管の病気なども原因になります。
原因によって必要な検査や治療が異なるため、診察と検査結果をあわせて判断します。
3.なぜ腹部エコー検査を行うの?
腹部エコー検査(腹部超音波検査)は、超音波を使ってお腹の中の臓器を見る検査です。
お腹にゼリーを塗り、プローブという機器を当てて、肝臓や胆のうなどの形や内部の状態を画像で確認します。
腹部エコー検査には、次のような特徴があります。
血液検査は、主に肝臓の細胞が傷ついていないかを調べる検査です。一方、腹部エコー検査では、臓器の形や内部の状態を画像で確認します。
このように、血液検査と腹部エコー検査でわかることは異なります。
原因を詳しく調べるため、必要に応じて両方の検査を組み合わせます。
4.腹部エコー検査でわかる主な病気
① 脂肪肝
脂肪肝では、肝臓が通常より白く明るく映ることがあります。
ただし、軽い脂肪肝は見つけにくい場合があります。また、腹部エコー検査だけでは、脂肪の量や炎症の有無を正確に判断できません。
② 肝硬変
肝硬変が進むと、肝臓の表面の凹凸や形の変化、脾臓の腫れ、腹水などが見られることがあります。
ただし、初期の線維化は、通常の腹部エコー検査だけでは評価が難しいことがあります。
必要に応じて、血液検査や肝臓の硬さを測る検査を追加します。
③ 肝臓にできるしこり
腹部エコー検査では、肝嚢胞、肝血管腫、肝腫瘍など、肝臓にできるしこりが見つかることがあります。
ただし、すべての病変を見つけられるわけではありません。
病変の大きさや位置、体格などによって十分に見えない場合は、CTやMRIなどの追加検査を行います。
④ 胆石・胆管の異常
肝機能異常の原因が、胆のうや胆管にあることもあります。
腹部エコー検査では、胆石や胆管の広がりなどを確認できることがあります。
5.どのような検査が必要?
肝機能異常が見つかっても、すべての方に同じ検査を行うわけではありません。
診察では、主に次の点を確認します。
確認した内容をもとに、必要に応じて血液検査や腹部エコー検査を行います。
肝臓の病気が疑われる場合は、専門の医療機関で詳しい検査が必要になることもあります。
6.このような方は医療機関にご相談ください
肝機能異常にはさまざまな原因があります。
症状がなくても、健康診断の結果に応じて医療機関を受診しましょう。
黄疸(皮膚や白目が黄色くなる)、強い腹痛、意識がぼんやりするなどの症状がある場合は、速やかに医療機関を受診してください。
7.当院の腹部エコー検査について
すみだ胃大腸肛門内視鏡クリニックでは、肝臓、胆のう、胆管、膵臓などを調べる腹部エコー検査を行っています。
https://sumida-endoscopy.com/medical/medical07/
検査のご案内
・検査日 第2・第4土曜日の午前
・検査時間 約15〜20分
・食事制限 原則として検査6時間前から絶食
・予約方法 外来診察での予約
腹部エコー検査は、診察で必要性を判断したうえで予約します。
検査結果によっては、追加の検査や専門医療機関への紹介をご案内します。
※検査時間は目安です。観察する部位や状態によって異なります。
※体格や腸内ガスの影響により、臓器の一部が見えにくい場合があります。
まとめ|健康診断で肝機能異常を指摘された方へ
健康診断で肝機能異常を指摘された場合、脂肪肝、アルコールによる肝障害、ウイルス性肝炎、胆道疾患など、さまざまな原因が考えられます。
腹部エコー検査は、肝臓や胆道の形や内部の状態を画像で確認する検査です。
ただし、この検査だけですべての肝臓の病気を診断できるわけではありません。
肝機能異常を指摘された方は、健康診断の結果を持参して医療機関にご相談ください。
当院では、診察と検査結果をもとに、必要な検査をご案内しています。
すみだ胃大腸肛門内視鏡クリニック
東京都墨田区東向島3-39-10 ダイアパレス向島百花園Ⅱ1F
電話:03-6231-9182
参考文献
1)日本消化器病学会・日本肝臓学会.MASLD診療ガイドライン2026(改訂第3版).
脂肪性肝疾患の診断・評価・管理に関する国内診療ガイドライン。日本肝臓学会 ガイドライン一覧
2)Kwo PY, Cohen SM, Lim JK. ACG Clinical Guideline: Evaluation of Abnormal Liver Chemistries. Am J Gastroenterol. 2017;112(1):18–35.DOI: 10.1038/ajg.2016.5
3)European Association for the Study of the Liver, et al. EASL–EASD–EASO Clinical Practice Guidelines on the Management of Metabolic Dysfunction-Associated Steatotic Liver Disease (MASLD). J Hepatol. 2024;81(3):492–542.DOI: 10.1016/j.jhep.2024.04.031
4)Rinella ME, et al. AASLD Practice Guidance on the Clinical Assessment and Management of Nonalcoholic Fatty Liver Disease. Hepatology. 2023;77(5):1797–1835.DOI: 10.1097/HEP.0000000000000323
5)熊田 卓ほか.超音波による脂肪性肝疾患診断の標準化と課題.
肝臓. 2026;67(2):87–100.DOI: 10.2957/kanzo.67.87