2026年8月27日

大腸がんは、日本で非常に多いがんの一つです。
一方、早期の大腸がんではほとんど症状がないことも多く、「症状がないから大丈夫」とは言い切れません。
そこで重要になるのが、40歳以上を対象とした**大腸がん検診(便潜血検査)**です。
しかし、検診には「受けて終わり」ではない重要なポイントがあります。
それは、便潜血検査で陽性となった場合に、きちんと精密検査を受けることです。
墨田区のデータから、大腸がん検診の現状と、便潜血陽性後に大腸カメラを受けることがなぜ重要なのかを解説します。
墨田区の大腸がん検診は「便潜血検査2日法」
墨田区では、40歳以上の区民を対象として大腸がん検診を実施しています。
検査方法は便潜血検査2日法です。
便の表面を専用の棒で採取し、肉眼では確認できない微量な血液が便に混じっていないかを調べます。
令和8年度の墨田区大腸がん検診は、
・対象:40歳以上
・検査方法:便潜血検査2日法
・費用:400円
となっています。
便を採取するだけなので身体への負担が少なく、大腸がんを早期に発見するための重要な入口となる検査です。
墨田区では大腸がん検診をどのくらいの人が受けている?
墨田区が公表している令和6年度の最新データでは、大腸がん検診を受診した方は18,565人でした。
そのうち、便潜血検査で「要精密検査」と判定された方は1,658人、要精検率は**8.9%**でした。
つまり、
大腸がん検診を受けた方のおよそ11人に1人が「精密検査が必要」と判定された
ことになります。
令和6年度 墨田区大腸がん検診 人数・割合
大腸がん検診受診者数 18,565人
要精検者数 1,658人
要精検率 8.9%
便潜血陽性は決して珍しい結果ではありません。
大切なのは、陽性という結果を受け取った後に、そこで終わりにせず大腸カメラによる精密検査につなげることです。
問題なのは「便潜血陽性後に大腸カメラを受けないこと」
墨田区では、便潜血検査で「要精密検査」と判定されても、精密検査まで受けていない方がいることが課題となっています。
精密検査受診率については、検診後の追跡期間が必要となるため、令和6年度検診の確定した精検受診率は現時点で公表資料から確認できません。
そこで、精密検査の受診状況については、確定した過年度データを見てみます。
令和4年度の墨田区大腸がん検診では、精密検査受診率は65.5%でした。
国が目標としている90%以上には届いていません。
つまり、当時のデータでは、精密検査が必要となった方のうち、確認できた範囲で約3人に1人が精密検査につながっていない状況でした。
墨田区でもこの問題を重視しており、「精密検査が必要」と判定された方のうち、精密検査の受診を確認できていない方に対して電話による受診状況の確認を行っています。
そもそも便潜血検査にはどんな意味があるの?
「便を少し採るだけの検査で、本当に大腸がんを予防できるの?」
と思われる方もいらっしゃるかもしれません。
便潜血検査は簡単な検査ですが、大腸がんによる死亡率を低下させる効果が科学的に確認されている検診方法です。
国立がん研究センターの「有効性評価に基づく大腸がん検診ガイドライン2024年度版」でも、便潜血検査は大腸がん検診として推奨グレードAとされています。
便潜血検査で大腸がん死亡率はどのくらい下がる?
海外の無作為化比較試験などでは、便潜血検査を定期的に行うことで、大腸がんによる死亡率が約2~3割低下することが示されています。
代表的な研究では、
・実際に検診を受けた人に限定した解析1):約23%の死亡率低下
・毎年検査を行った大規模研究2):約33%の死亡率低下
が報告されています。
研究方法や検査方法によって数字には幅がありますが、
便潜血検査を定期的に受けることによって、大腸がんで亡くなるリスクを減らせる
という点は重要です。
なぜ「便を調べるだけ」で死亡率が下がるの?
便潜血検査そのものが大腸がんを治療するわけではありません。
重要なのは、その**「先」**です。
① 便潜血検査を受ける
↓
② 便に微量の血液がないか調べる
↓
③ 陽性なら大腸カメラを受ける
↓
④ 大腸がんや大腸ポリープを発見する
↓
⑤ 早期発見・早期治療につなげる
大腸がんや大腸ポリープでは、目で見ても分からない程度の少量の出血が起こることがあります。
便潜血検査は、そのわずかな血液を手がかりとして、「大腸を詳しく調べたほうがよい人」を見つける検査なのです。
大切なのは「便潜血検査を受けること」+「陽性なら大腸カメラを受けること」
ここが最も重要なポイントです。
便潜血検査を受けただけでは、大腸がん検診は完結しません。
便潜血陽性になった方が大腸カメラによる精密検査を受けることで、初めて大腸がんやポリープを直接確認することができます。
つまり、
便潜血検査は「入口」
大腸カメラは「陽性だったときに原因を確認する精密検査」
と考えると分かりやすいでしょう。
せっかく便潜血検査で異常の可能性を見つけても、その後の精密検査を受けなければ、早期発見につなげる機会を逃してしまう可能性があります。
「痔があるから便潜血陽性になった」は大丈夫?
当院でもよく聞くのが、
「痔があるので、その血だと思います」
というお話です。
確かに、痔からの出血によって便潜血検査が陽性になる可能性はあります。
しかし、
「痔がある=大腸に病気がない」
ということにはなりません。
痔がある方に、大腸ポリープや大腸がんが同時に存在する可能性もあります。
そのため、便潜血陽性を「痔だと思うから」という理由だけで放置することはおすすめできません。
便潜血をもう一度やって陰性なら大丈夫?
これもよくある誤解です。
一度便潜血陽性となった後に、もう一度便潜血検査を行って陰性だったとしても、精密検査が不要になるわけではありません。
大腸ポリープや大腸がんが存在していても、常に出血しているとは限らないためです。
そのため、便潜血検査を繰り返して「今回は陰性だったから大丈夫」と判断することはおすすめできません。
厚生労働省の指針でも、便潜血検査で精密検査が必要となった場合、全大腸内視鏡検査(大腸カメラ)が第一選択とされています。
なぜ便潜血陽性なら大腸カメラをおすすめするの?
便潜血検査で分かるのは、
「便の中に血液が混じっている可能性がある」
ということです。
それだけでは、
を判断することはできません。
そこで必要になるのが大腸カメラです。
大腸カメラでは大腸の中を直接観察できるため、
などを確認することができます。
さらに大腸ポリープについては、大きさや形、内服薬などの条件を確認したうえで、検査と同時に切除できる場合があります。
つまり大腸カメラには、
「大腸がんを早期に見つける」
だけでなく、
「将来、大腸がんになる可能性のあるポリープを発見し、治療する」
という重要な役割もあります。
「便潜血陽性=大腸がん」ではありません
便潜血陽性と言われると、
「がんだったらどうしよう」
と不安になり、大腸カメラを先延ばしにしてしまう方もいらっしゃいます。
しかし、便潜血陽性だからといって、大腸がんが確定したわけではありません。
実際にはポリープや痔など、さまざまな原因があります。
だからこそ、
「怖いから調べない」のではなく、「原因を確認するために調べる」
ことが大切です。
もし大腸がんが見つかった場合でも、早期に発見できれば治療の選択肢は大きく広がります。
特に大腸カメラをおすすめしたい方
次のような方は、一度消化器内科・内視鏡専門医へご相談ください。
特に血便などの症状がある場合は、検診を待つのではなく医療機関を受診して原因を調べることが重要です。
すみだ胃大腸肛門内視鏡クリニックでは
当院では、便潜血陽性となった方の精密検査として**大腸内視鏡検査(大腸カメラ)**を行っています。
「大腸カメラは痛そう」
「以前受けた検査がつらかった」
「下剤を飲むのが心配」
など、不安をお持ちの方も少なくありません。
当院では、患者さんの不安や身体的負担に配慮しながら検査を行うことを大切にしています。
また、検査中にポリープが発見された場合には、大きさや形、全身状態、内服薬などを確認したうえで、可能なものについては日帰りでの大腸ポリープ切除にも対応しています。
便潜血陽性は「大腸を詳しく調べるきっかけ」です
大腸がん検診で大切なのは、次の2つです。
① 40歳を過ぎたら定期的に便潜血検査を受けること
② 便潜血陽性なら、放置せず大腸カメラを受けること
便潜血検査は簡単な検査ですが、定期的に受けることで大腸がん死亡率を約2~3割低下させる効果が示されています。
しかし、その効果を生かすためには、陽性となった方を確実に精密検査へつなげることが重要です。
墨田区では、令和4年度の大腸がん検診の精密検査受診率は**65.5%**でした。
約3人に1人が精密検査につながっていないという現状があります。
便潜血陽性は「大腸がん」という意味ではありません。
むしろ、
「大腸を一度きちんと調べるきっかけ」
と考えていただくことが大切です。
「便潜血陽性と言われたけれど、まだ大腸カメラを受けていない」
「痔からの出血だと思ってそのままにしている」
「大腸カメラが怖くて先延ばしにしている」
という方は、一度ご相談ください。
すみだ胃大腸肛門内視鏡クリニック
便潜血陽性の精密検査、大腸カメラ、大腸ポリープ切除についてご相談いただけます。

【参考文献】
1)A systematic review of the effects of screening for colorectal cancer using the faecal occult blood test, hemoccult. BJM. 1998 Aug 29;317(7158):559-65.
2) Reducing mortality from colorectal cancer by screening for fecal occult blood. Minnesota Colon Cancer Control Study. N Engl J Med. 1993 May 13;328(19):1365-71.