2026年9月17日

直腸がんと結腸がんの違いとは?
同じ「大腸がん」でも症状や治療が異なります。
「大腸がん」と聞くと、ひとつの病気のように思われるかもしれません。
しかし、大腸がんは、がんができる場所によって大きく「結腸がん」と「直腸がん」に分けられます。
どちらも大腸に発生するがんですが、直腸は肛門に近く、骨盤の深い位置にあるため、症状や手術方法、治療後の排便機能などに結腸がんとは異なる特徴があります。
今回は、直腸がんと結腸がんの違いについて、できるだけわかりやすく解説します。
そもそも「大腸」はどこ?
大腸は、小腸から続いて肛門につながる消化管で、大きく
結腸 → 直腸 → 肛門
と続いています。
結腸はさらに、盲腸・上行結腸・横行結腸・下行結腸・S状結腸などに分けられます。
このうち、
結腸にできたがん=結腸がん
直腸にできたがん=直腸がん
です。

つまり、結腸がんと直腸がんを合わせたものが「大腸がん」です。
直腸がんと結腸がんは何が違う?
最も大きな違いは、がんができる場所です。
直腸は骨盤の奥深くにあり、その周囲には膀胱や前立腺、子宮などの臓器のほか、排尿や性機能に関係する神経も存在します。
そのため直腸がんでは、単に「がんを切除する」だけではなく、がんの根治性を考慮しながら、肛門や排便・排尿などの機能をどこまで温存できるかも重要になります。国立がん研究センターも、直腸がんでは腫瘍の位置や進行状況に応じて複数の術式が選択され、周囲の自律神経を可能な範囲で温存することが重要と説明しています。
直腸がんでは「血便」が重要なサイン
直腸がんは肛門に近い場所に発生するため、比較的気づきやすい症状のひとつが血便・排便時出血です。
たとえば、
・便に赤い血が付く
・トイレットペーパーに血が付く
・便器が赤くなる
・便に血や粘液が混じる
といった症状がみられることがあります。
ここで注意したいのが、
「鮮やかな赤い血だから痔だろう」
と自己判断してしまうことです。
確かに、排便時の鮮血は痔核(いぼ痔)や裂肛(切れ痔)でもよくみられます。
しかし、直腸がんでも同じような出血が起こることがあります。
「痔がある=今回の出血も痔」とは限りません。
特に、血便が繰り返す場合や、便通の変化を伴う場合、40歳以上で初めて血便がみられた場合などでは、肛門だけを見るのではなく、大腸全体を確認することが大切です。
直腸がんでは「便が細くなる」「残便感」が出ることも
直腸は便が肛門へ出ていく直前の通り道です。
そのため、直腸に腫瘍ができて大きくなると、
「便が以前より細くなった」
「何度トイレに行っても残っている感じがする」
「便意はあるのにあまり出ない」
「便秘と下痢を繰り返す」
といった症状がみられることがあります。
ただし、これらの症状があるからといって必ず直腸がんというわけではありません。
大切なのは、これまでと違う便通の変化が続いている場合に放置しないことです。
結腸がんでは症状がわかりにくいことも
一方、結腸がんは発生する場所によって症状が異なります。
たとえば右側の結腸では腸管が比較的広く、便もまだ液状に近いため、ある程度がんが大きくなっても便の通過障害が起こりにくいことがあります。
そのため、
「健康診断で貧血を指摘された」
ことをきっかけに検査を受け、結腸がんが発見される場合があります。
一方、S状結腸など肛門に近い結腸では、
・血便
・便秘
・便が細くなる
・腹部膨満感
・腹痛
などが現れることがあります。
つまり、症状だけから「結腸がん」「直腸がん」を正確に区別することは困難です。
直腸がんと結腸がんでは手術にも違いがあります
結腸がんでは一般的に、がんを含む一定範囲の結腸とリンパ節を切除し、残った腸管同士をつなぎます。
一方、直腸がんでは「肛門からどのくらい離れているか」が非常に大切です。
直腸は肛門につながっているため、腫瘍の位置によって、
・前方切除術
・低位前方切除術
・超低位前方切除術
・括約筋間直腸切除術(ISR)
・直腸切断術
などの術式が検討されます。
現在では、がんを適切に切除することを最優先としながら、可能な限り肛門を温存する手術が行われています。
一方で、がんが肛門に非常に近い場合や、肛門括約筋まで及んでいる場合などでは、肛門を切除して永久人工肛門(ストーマ)が必要になることがあります。
また、縫合した腸管を保護する目的などで、一時的な人工肛門を造設する場合もあります。
「直腸がん=必ず人工肛門」というわけではありません。実際には、がんの位置や進行度、肛門括約筋との関係などを詳しく評価したうえで治療方法が決められます。
直腸がんでは「治った後の排便」も重要
直腸には、便を一時的にためておく役割があります。
そのため、直腸を大きく切除して肛門近くで腸管をつなぐと、手術後に
「1日に何度も便が出る」
「急に便意が起こる」
「便を我慢しにくい」
「少量ずつ何回にも分かれて出る」
といった排便機能の変化が起こることがあります。
こうした直腸切除後の排便障害は、一般に低位前方切除後症候群(LARS:Low Anterior Resection Syndrome)と呼ばれます。
したがって直腸がんでは、がんを治療することはもちろん、治療後の生活の質(QOL)まで考えて治療方法を検討することが非常に重要です。
直腸がんの手術では医学や医療技術の進歩によりご自身の肛門を温存できる可能性がありますが、依然として術後排便機能を維持することに関しては課題があります。
直腸がんは早期発見を行い大腸カメラによる切除ができるかどうかが非常に重要となることがご理解いただけたでしょうか。
ただし「早期発見」が重要なのはどちらも同じです
結腸がんと直腸がんには違いがありますが、共通して非常に重要なのが早期発見です。
大腸がんは、早期の段階では自覚症状がないことがあります。
また、大腸がんの多くは大腸ポリープ(腺腫など)を経て発生すると考えられており、大腸カメラではがんを発見するだけでなく、将来がんになる可能性のあるポリープを発見し、条件によってはその場で切除することもできます。
そのため、
「症状がないから大丈夫」ではなく、検診や大腸カメラを適切なタイミングで受けることが大切です。
便潜血陽性を「痔だと思う」で終わらせないことが大切
健康診断や大腸がん検診で行われる便潜血検査は、便の中に含まれる微量の血液を調べる検査です。
便潜血陽性になった場合、
「昔から痔があるから」
「排便したときに少し切れただけだと思う」
「もう一度便潜血検査をすればいいのでは?」
と考えてしまう方もいらっしゃいます。
しかし、便潜血検査だけでは、出血が痔からなのか、ポリープや大腸がんからなのかを判断することはできません。
便潜血陽性を指摘された場合には、大腸カメラによる精密検査を受けることが大切です。
血便があるときは「肛門」と「大腸」の両方を確認することが大切です
血便の原因として、痔は非常に身近な病気です。
しかし、痔と大腸がんはどちらか一方しか存在しない病気ではなく、痔がある方に大腸ポリープや大腸がんが見つかる可能性もあります。
そのため血便を診療するときには、
「肛門から出血しているか」
だけではなく、
「大腸の奥に出血の原因となる病変がないか」
という視点も大切です。
肛門診察と大腸内視鏡検査は、どちらか一方を選ぶものではありません。
症状や年齢、これまでの検査歴などを考慮しながら、必要に応じて両方を確認することで、痔などの肛門疾患から大腸ポリープ、大腸がんまで幅広い診断につながります。
墨田区で血便・便潜血陽性・大腸カメラをご検討の方へ
すみだ胃大腸肛門内視鏡クリニックでは、肛門疾患の診察と大腸内視鏡検査の両方に対応しています。
「血が出たけれど痔なのかわからない」
「便潜血検査で陽性になった」
「最近、便が細くなった気がする」
「便秘や下痢など便通が変わってきた」
「以前から痔があるので出血を放置している」
このような症状がある方は、一度ご相談ください。
特に血便の場合、痔だから大丈夫と自己判断せず、必要に応じて大腸全体を確認することが大切です。
まとめ|直腸がんと結腸がんは同じ「大腸がん」でも違いがあります
結腸がんと直腸がんは、どちらも大腸に発生するがんですが、発生する場所が異なります。
特に直腸がんは肛門に近く、狭い骨盤内に発生するため、肛門温存、人工肛門の可能性、排便機能、排尿・性機能など、治療後の生活まで考慮した治療が重要になるという特徴があります。
一方、早期には症状がほとんどない場合があること、血便や便潜血陽性が発見のきっかけになること、早期発見が重要であることは共通しています。
血便・便潜血陽性・便通の変化を「痔だろう」「いつもの便秘だろう」と自己判断せず、気になる症状が続く場合には専門医へ相談しましょう。

参考文献
・大腸癌研究会「大腸癌治療ガイドライン 医師用2026年版」
・国立がん研究センター がん情報サービス「大腸がん(結腸がん・直腸がん)」
・国立がん研究センター中央病院 大腸外科「直腸がんの手術・肛門温存手術」